■被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
九州(熊本)豪雨により被災された皆様、心よりお見舞い申し上げます。未だ不安な思いでいらっしゃる方も多いことと思います。被害が最小となることを祈ります(7/7記す)。
7日から3日間、佐賀・長崎に仕事に赴くことになっていました。ここ5年程、毎年、お世話になっている仕事です。思いの深い仕事ですので、とても心配しています。どうぞ、ご安全に。
令和2年7月豪雨災害義援金【日本赤十字社】

ホワイトボード
■避難所運営ゲームHUG
災害時、各地域で避難所が開設されます。避難所は自主運営が原則であることをご存知でしょうか。
その運営シミレーションをするゲームが、HUG(避難所・運営・ゲームの頭文字でHUG)です。数名が1グループとなり、避難所運営者の立場を疑似体験します。
避難所HUG【静岡県地震防災センター】 

4年前になりますが、お誘いを受けて、HUGを体験したことがあります。同じチームには、ファシリテーションを学んでいる知り合いの他、被災地でボランティア活動に従事されている方、看護師の方等もいらっしゃいました。

大きな模造紙に避難所の見取り図を描き、一枚ずつめくるカードに記載されている懸案事項を皆で話し合い、決断していくゲームです。一つの事項についての話し合いの時間は短く、ゲーム運営者の指示で次々とカードをめくらされていきます。決断しなければならないのは、例えば、「ペットを連れてきたが、どうすれば良いか」「〇時間後に、救援物資が搬送されてくるのでスペースを確保しておくように」「急病人が出た」「〇〇地区の住民が今後避難所に入る可能性がある」等です。

前の判断を翻したり、今後起こることを予測したり等、話し合っていく過程で、多様な人々の集まりである避難所運営の難しさが浮き彫りになりました。

■現実を知るボランティアが苛立ち、グループから浮いていく
グループ内の話し合いで、特に印象に残ったのは、災害ボランティアに従事されている方でした。その日も、たまたま被災地から一時帰宅した合間を縫っての参加とおっしゃっていたと記憶しています。

決断が急かされるにしたがって、彼が苛立ってくるのが手に取るようにわかりました。初めのうちは、現場から得た知見に基づいて話していたのが、徐々に、異なる意見に対して、「はい、はい、じゃあどうしますか?こういうことで良いですか?」と、現実を分かっていない奴ら相手という感じの対応になっていきました。

多様な意見を尊重しながら最善解を見つけ出そうと努力するファシリテーションのスタイルを迂遠に感じたのかもしれません。確かに、矢継ぎ早にくる懸案事項を捌いていくためには、時間をかけられません。迅速に判断することは、大変重要です。
しかし、現実を知っているのであれば、知らない人間に対して情報を示し、メンバーの理解、納得の過程を辿らないと、感情的軋轢により、メンバーの心は離れていくばかりです。そこには、断絶があるのみです。

専門家(専門知識を保有していると自負する者)の扱いにくさはこの点にあります。しかし、これはゲームの中だけでなく、職場でも、起こっている現象ではないでしょうか。

■専門知識の使い方
専門家は、細分化された狭い世界の中において知識を深めた者です。その専門家が、外部に向かって話すとき、自分の言葉や自分の専門の世界で通用する常識が通じないことを自覚する必要があります。
※この点、COVID-19 における専門家会議(解散)は、良くコミュニケーションをとろうと努力されていたと思います。

また、狭く、細分化された専門家の意見が、一般社会の中で、常に妥当するとは限りません。様々な要素が絡み合い、干渉しあうのが、一般社会だからです。専門家は、専門性に基づいた自己の判断が絶対に正しいと思いこまぬよう自己抑制が求められます。

一方、専門家ではない人間は、専門家を「使う」意識をもつ必要があります。専門家は、必ずしも一般社会に適合的な意思決定をするとは限りません。専門家に任せるのではなく、彼らの保有する専門知識を自分たちの生活・環境に合うよう擦り合わせる必要があります。

■最後に
ここまで、「専門家」と書いてきましたが、私たちは、皆、経験を積むにつれ、「専門家意識」をもちがちです。ご紹介したHUG内でのエピソードと同様の現象は、各組織・各職場内でも、散見されるはずです。

特に経験や実績を積んできたある程度の年代以上の者は自分を戒める必要があります。自負と自信は、己の世界を狭める方向に作用します。そして、その狭い世界に固執すると、自分の考えと異なる者を、何も分かっていない、と苛立ち、周囲と断絶していくことになります。
マネジャーが謙虚であることを求められる所以です。

「実ほど頭を垂れる稲穂かな」という故事成語があります。これは、単なる倫理規範ではなく、身につけた知識・経験を組織・社会に役立てるための必要条件でもあるのです。

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組織開発コンサルタント 後閑徹

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